臨界期仮説という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。英語は遅くとも3歳には始めとかないといけない、いや10歳だとか、いったい何歳だ?とか思ったことはないですか?
最初に書いておくと臨界期仮説(記事本文で詳しく説明)はあくまで仮説であって、本当なのかはまだわかっていないし、臨界期とされる年齢についても学者によって様々です。
英語を始めるのは早い方がいいと実感している人が多いでしょうし、始める年齢に興味のある人も多いと思います。今回の記事では臨界期仮説について紹介していきます。
臨界期仮説とは?
臨界期仮説というのは、言語を習得するのに理想的な時期があるという仮説です。臨界期とされる年齢を過ぎると習得するのが難しくなるというものです。
年をとると新しい言語を学ぶのは苦労します。特にどの言語も持っている規則性(文法)、例えば名詞や動詞が文の中でどんな順番に来るかをマスターするのが大変です。
また大人になるとネイティブスピーカー並みの発音を身につけるのは難しいと言われています。語彙に関しては年齢を重ねても増やすことができ、臨界期は関係ないようです。
なぜ年をとると言語を習得するのに苦労するのでしょうか?神経可塑性という性質が脳にあります。外界の刺激を受けると、神経系が機能的・構造的な変化を起こします。
年をとると変化を起こす柔軟性が弱くなってくるので、新しい言語という刺激に適応しにくくなります。子どもの脳の方が新しい言語にもっと簡単に適応できるというものです。
臨界期仮説はどこから来た?
元々は母語の習得の研究から導かれた仮説で、後に第二言語の学習を始めるのに一番良い時期はいつか?という研究に発展しました。
何らかの事情で社会から隔離され、言語刺激を受けることなく育った子供が今までいました。発見後、社会生活を始めて言語のトレーニングを受けても、話せるようにならなかったことが指摘されています。これは臨界期を過ぎていたからだと考えられています。
Victor (男、発見時11~12歳)
南フランスの森で野生生活を送っていたところ発見された捕らえられた野生児。教育を受けたが、会話ができるようにはならず身振り手振りでのコミュニケーションにとどまった。
Genie(女、発見時13歳)
父親から虐待を受け、暗い部屋に閉じ込められていました。言語の訓練を受けましたが文を話せるようにはなりませんでした。
このような子どもたちを調べている時に私はアマラとカマラを思い出しました。オオカミに育てられた姉妹で覚えている方もいると思います。
ついでに調べてみたら、彼女たちは実在したもののオオカミから育てられたというのは彼女たちの面倒を見た牧師の作り話と推測されているようです。孤児院の寄附金目当てという話もあります。
Genieも父から虐待を受けた上に、発見後は研究目的で大人に利用されたので、大人たちの思惑に人生を翻弄されたのかなと思うと胸が痛みます。
臨界期仮説の歴史
Wilder PenfieldとLamar Roberts(1959)が最初に臨界期仮説を唱えました。主に言語の神経科学について研究し、9歳までなら複数の言語を学ぶことが可能と主張しました。
言語機能をつかさどるのは主に左脳です。Eric Lenneberg(1967)は、13歳ぐらいまでに右脳と左脳の機能分化(脳の一側化)が完了するとして、この頃が臨界期であるとしました。
Noam Chomskyは人間は言語を習得する能力を生まれつき持っていて、子どもは皆、言語習得装置(LAD: Language Acquisiton Device)を持っているとしました。
臨界期の年齢は?
臨界期の年齢は学者によって主張が違います。
Krashen(1973)…5歳
Pinker(1994)…6歳
Lenneberg(1967)…12歳
Johnson & Newport(1989)…15歳
大人になったら英語はできるようにならないのか?
臨界期とされる時期を過ぎてもバイリンガルになるとする研究者もいます。
David Singletonはバイリンガルの5パーセントは大人になってから第二言語を学び始めたと主張しています。
David Birdsongらは、日常的にその外国語を使用し、高い動機を持って発音や聞き取りの訓練を長期間受ければ、10%以上の人がネイティブ並みの発音や文法能力を獲得できるという研究結果を発表しました。
年齢以外の英語習得の要因
社会が英語を必要とする
以前の記事でも取り上げましたが、人口が少ないなどの理由で自国のテレビ番組が少ないフィンランドでは英語のテレビ番組を見ることが多いです。それはフィンランド人の英語力が高い理由の一つです。
また小さい国なので国民は外国語を身につける必要があると認識しています。
私たちは日本に住んでいるので、これから日本がもっと英語が必要な社会になったら英語ができる人が増えるでしょう。
日本で働く外国人や外国人観光客が年々増えています。またインターネットの発達で世界との心理的距離は縮まっています。世界を相手にする企業も増えています。これからもっと英語を必要とする社会になると考えられます。
言語間の距離
第一言語と第二言語が似ていたら、学びやすく習得にそれほど時間はかからないでしょう。例えば英語とノルウェー語は同じ言語グループなので、ノルウェー人にとって英語はそれほど難しくないです。
日本語と英語は世界にある言語でも最も離れているので、日本人にとって英語は難しいです。
環境
ベトナムで有名な観光地がある地域はたくさんの外国人が訪れるので、その地域に住む子供たちは英語が流暢だと大学の授業で聞いたことがあります。
日本には子どもたちが流暢になるほどの観光地はないと思いますが、おうちで英語の環境は工夫次第で作ることができます。英語の本を読んだり、テレビを見たりできます。
我が家では最近Netflixのお試しを始めたのですが、便利だなと気に入っています。英語環境を簡単に作ることができるなと感じています。
動機(モチベーション)
小さい子供はあまり動機というのはないと思いますが、成長してくると外国に行って英語を話してみたい、留学したい、英語を使った仕事につきたいとか出てくるでしょう。
外国人のお友だちができれば、もっと話したいと思うようになります。楽しくおしゃべりしているうちにどんどん上手になります。
態度
好奇心があって、もっと世界のことが知りたいとか、英語でもっと自分の世界を広げたいという気持ちがあれば習得を後押しするでしょう。
まだ子どもなら親の態度も大きいです。親も子どもの英語や世界への興味を喜んでくれることも大きな要因になります。
まとめ
臨界期が本当にあるかはわかっていないし、英語ができるようになる要因は年齢以外にたくさんあります。何歳であっても外国語に挑戦していいと思います。
50代で日本語の勉強を始めたオージーのお友だちは、脳にもいいなんて言いながら楽しんでいます。私は中国語ができたらいいな、いつか始めたいなと思っています。
でも息子を見ていて、私よりずっと楽に英語ができるようになってきていると思うのでやっぱり子どものうちがいいのかな?とは思っています。
何歳であっても人と比べることなく自分の成長を喜び、その言語から広がる世界を楽しむのが一番なのかなと思います。
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