大学入試(英語)|8外部試験を活用するのは本当はおかしい理由

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2020年に大学入試が大きく変わります。英語は英検・GTEC・TOEFL・IELTSなどの外部試験を併用するので一番大きな変化だと言えます。

日本では昔から大学に入学するのに試験を受けて合格しないといけません。ただ近年は一般入試に加えて、推薦入試やAO入試が増え多様化しています。

世界には入試はなく、それまでの学校での成績や活動、推薦状で入学許可が判断されるのが主流である国が多くあります。

学校での評価は今まで低かったけど、行きたい学校が見つかったから一般入試で一発逆転したい人もいるでしょう。英語に関しては、行きたい大学に出願可能になったり得点が換算される外部試験で勝負をかけることは大きな戦略になります。

この記事ではそもそもテストで英語能力が測れるのか、入試問題のような多くの人が受けるテストはどのように作られるのか、メリット&デメリット、大学入試に8外部試験を活用するのは本当はおかしい理由などを書きます。

2019年7月3日追記:

8外部試験の一つであったTOEICは大学入学共通テストから撤退しました。詳細はこちらから

そもそもテストで英語能力が測れるのか?

英語能力を測るテストは色々ありますが、その人の英語能力を100%正しく測ることができるテストはないと言われています。

TOEICでハイスコアを持っていても、英検1級持っていても、そんなに英語でコミュニケーションできない人がいるというのを聞いたことがあるのではないでしょうか?

英語のコミュニケーション能力を測るには、例えばその人をカメラで一日中モニターしてどう人と会話しているかチェックする、そんなことが必要になり現実的ではありません。

アメリカに大学に留学するには、語学能力の証明としてTOEFLのスコアを提出しなければいけません。しかしTOEFLでは留学で必要なリーディングスキルを完璧に測ることはできません。

TOEFLのリーディングセクションは約700語のパッセージが3~4個あります。ここでは2500語だとすると、Wordのシングルスペースで5ページほどです。

留学中に読む量はそんなものではないです。もっともっと大量に読まないといけないので、その留学生が大学の勉強についていくのに必要な読む能力を持っているかは予測することはできないのです。

Standardized test(センター試験・TOEIC・英検・TOEFLなど)とは?

アメリカで大学入学に関わるStandardized testというとScholastic Aptitude Test(SAT)、Graduate Record Exam(GRE)、Graduate Management Admission Test(GMAT)、Law School Aptitude Test(LSAT)、留学生向けの語学能力証明テストとしてTest of English as a Foreign Language(TOEFL)があります。

Standardized testは日本語に言葉通り訳すと標準テストや標準検査となります。標準テストと聞くと、文科省が行っている全国の小学6年生、中学3年生対象の全国学力・学習状況調査が思い浮かびます。

Standardized testは、そのようなテストだけではなく、センター試験や2020年度(2021年度入試)から始まる大学入学共通テスト、大学入試で活用される英語外部試験も含まれます。

受験者の人数はかなり多く、全員が同じ状況下で同じ質問に回答し、同じ採点基準で行われるテストです。従来は紙と鉛筆のテストでしたが、近年はコンピューターでの受験が増えています。

選択肢方式の問題が多いですが、正誤を選ぶ、単語や短い文で答える、エッセイなども含まれます。大規模に実施されるテストのため、コンピューターが瞬時に低コストで正確に採点できるように選択肢方式の問題が多いのです。

エッセイなどの自由回答方式問題の採点に関してもAIによる自動採点の導入が今後進んでいきます。

Standardized testはどのように作成されるか

ステップ1:テストの目的・目標を決める

真っ先に決めるのはそのテストの目的です。TOEFLやIELTS academicは英語が母語ではない人の英語能力を評価し、英語圏にある大学など高等教育機関に入学可能か決める判断材料にするのが目的です。

TOEICは日本経済団体連合会と通商産業省の要請でTOEFLを作成しているETSが開発したテストです。テストには日常会話だけでなくオフィスでの会話や仕事でのメッセージのやり取りに関する問題があります。

また採用や昇進にTOEICのスコアが考慮されることからビジネスで英語が使える能力があるか判断する材料とする目的があったと考えられます。

テスト作成者は、受験者のモチベーションやテストが与える社会的影響などを考えて目的にあった試験を作らなければいけません。

ステップ2:テストにおける必要事項を列挙する(テストの仕様を決める)

1996年より以前のTOEFLはリスニング・構文・リーディングという3つの構成からなる仕様でした。1996年にTest of Written English(TWE)に少し修正を加えたライティングセクションを含めたコンピューター式のテストを始めました。2005年にiBTが始まり、スピーキング能力を測定するようになりました。

TOEFLではリスニング能力を測るために、何を念頭に問題が作られているか一部紹介します。

・アカデミックな講義・会話を使う

・要点を理解できるか

・与えられた情報から推測し結論を引き出せるか

・講義の中でどの部分が前置きなのか、結論なのかを区別できるか

・トピックが変わったこと、脱線したことなどが理解できるか

・会話や講義に出てくるボキャブラリーやイディオムが理解できるか

ステップ3:どんな問題を組み込むか決める

ステップ4:それぞれの問題が適切か判断、修正する

例えばあるパッセージを読んで、その要約を完成する問題を組み込むことに決めたとします。そしてその要約には虫食い状態になっていて、空いているかっこに当てはまる単語を書き入れる問題にします。

その単語は選択式にするのか、パッセージに出てきている単語を書くことにするのかというのも決めます。選択式にするのなら、選択肢の単語は何にするのか慎重に選ばなければいけません。明らかに違うとわかるような選択肢だと簡単すぎるので、紛らわしい選択肢を含めます。

正式な試験の形にする前に、実際に人に解いてもらって適切かどうか分析します。分析を基に選択肢の単語を変えるなど修正します。

試験の進行も信頼性を高めるのに重要です。わかりやすい説明、受験者が解答できる試験時間を検討します。

ステップ5:採点方法や採点報告のフォーマットを決める

リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングと4セクションあるとします。理スイング・リーディングは選択肢方式問題でコンピューターが採点します。スピーキング・ライティングに関しては、採点基準(rubric)を基に人間が主に採点します。

受験者はそれぞれのセクションにおけるスコアがわかり、4セクションの総合の平均がテストスコアにする、というようなことを決めます。

ステップ6:テスト実施を始めても妥当性を高める調査を続ける

特に人間が主に採点をするスピーキングやライティングに関して、最新の研究結果を参考にするなど妥当性のチェックは絶えず行う。

Standardized testsのメリット

・採点は客観的で信頼できる

・すべての受験者に対して平等である(同じ状況下で同じ問題を解き、同じ採点基準の結果が出る)

・努力すれば点数が取れることから自信につながる

・大人数が一度に受験できる

・何度も過去に実施しているので妥当性がある

・採点システムが簡素化されていて効率が良い

Standardized testのデメリット

・創造力、情熱、好奇心などを測ることはできない

・テスト対策に時間を取られ、本当の学びの時間が少なくなる

・パターンがわかればテクニックで解答できる(必ずしも実力を反映しない)

・カリキュラムや学びの幅を狭めてしまう

・先生の偏った評価につながってしまう

・学習障害など特別なニーズがある生徒にとって不利である

What standardized tests don't measure | Nikki Adeli | TEDxPhiladelphia

大学入試に英検・TOEICなどの外部試験を併用するのが本当はおかしい理由

上に書いたように、Standardized testはまずテストの目的を決めてそれに沿って作成されます。目的が一番重要だからです。しかし8外部試験はそれぞれ作成された目的が違います。一つ一つ見ていきましょう。

ケンブリッジ英語検定

学習者が実生活のさまざまな状況において、コミュ ニケーションのために英語をどのように使うことができるかを評価する

TEAP TEAP CBT

EFL(外国語としての英語)環境の大学における授業等で行う言語活動において英語を理解したり、考えを伝えたりすることが出来るかを評価する

実用英語検定

英語圏における社会生活(日常・アカデミック・ビジネス)に必要な英語を理解し、使うことができるかを評価する

TOEFL iBT

高等教育機関において英語を用いて学業を修めるのに必要な英語力を有しているかを測ることを目的とする

GTEC

高校生が実際の使用場面(ジェネラル・アカデミック)において必要とされる英語によるコミュニケーション力を、知識・技能を基礎とした上で、思考・ 判断・表現の力まで評価する

TOEIC L&R TOEIC S&W

和文英訳・英文和訳などの技術ではなく、身近な内容か らビジネスまで幅広くどれだけ英語でコミュニケーショ ンできるかを評価する

2019年7月3日追記:

TOEICは大学入学共通テストから撤退しました。詳細はこちらから

IELTS

英語を用いたコミュニケーションが必要な場所において、就学・就業するために必要な英語力があるかを評価する

それぞれの試験の目的の違いに関して、文科省は以下のように述べています。

各資格・検定試験が掲げる目的は、以下のようにそれぞれ多様であるが、いずれも学習指導要領が想定している言語の使用場面の範囲から外れるものではない。

引用:文部科学省, 大学入学共通テストの枠組みで実施する民間の英語資格・検定試験について

範囲から外れるものではないとは言っても、まず出発点である一番大事な目的が違うのだからあらゆることが違うはずなのです。そして文科省からの文書の引用を上に書きましたが、ブリティッシュカウンシルのIELTSのページにはこう書いてあります。

IELTSは、留学、海外での就職・移住を実現させるために必要な英語力を証明する試験として世界で受け入れられています。

別にIELTSは受けない方がいいという話ではないです。作成の段階で、日本の大学に通う予定の高校生の受験は全く想定されていないということです。想定して作られた外部試験はTEAPだけです。ただTEAPはまだ歴史の浅い試験です。

ではなぜ無理矢理?つじつまを合わせてまで、外部試験を利用しなければいけないのでしょうか?キーワードはPracticalityです。Practicalityというのはその試験が実施可能かということです。

大学入学希望の全国の高校生が一斉にライティング・スピーキングを含むテストを受けるには、時間・採点する人・費用などの面で不可能と判断した為です。ですから、4技能をバランスよく評価するのに今の段階では外部試験を活用するしかないのかなと思っています。

次に各試験のスコアについて考えていきます。

各資格・検定試験とCEFR(外国語の学習、教授、評価 のためのヨーロッパ共通参照枠)の対照表が専門家の検証の基、作られています。

Image result for 各資格・検定試験とCEFRとの対照表

引用:文部科学省、各資格・検定試験とCEFRの対照表

この表を見ると一つのレベルがかなり広いと感じます。例えばIELTS5.5~6.5がB2という一つのレベルになっています。5.5と6.5はかなり違います。IELTSはバンドを1上げるのに語学学校では半年かかると言われています。

またスコアが2桁で出る試験もあれば4桁で出る試験もあり、IELTSにいたっては0.5刻みにしかスコアは出ません。

スコアの桁が全然違う8つの試験を同じものさしを使うというのは、乱暴じゃないか?と思ってしまうのですが、一つの民間だけに絞るのは大人の事情も絡んでくるから仕方ないのかな…と想像したりもします。

外部試験を活用することによる影響

日本のように英語がそれほど日常生活に浸透していない国では、大学入試の英語試験が変わるのはかなりの影響があります。試験による影響のことをwashbackと言いますが、文法・訳読中心の試験の時代にはネガティブなwashbackがありました。

コミュニケーション重視の授業をしたい、それが大事だとわかっている先生も文法・訳読中心の試験対策をしないといけませんでした。生徒も点数をとるためにそのような勉強を中心にせざるを得ませんでした。

4技能を測るテストに移行すれば、インプットばかりだった授業からアウトプットも含めたバランスの良い授業になりポジティブなwashbackが生まれるでしょう。以前より良くなることは間違いないです。

しかし、Standardized testにはデメリットが上に書いたようにたくさんあります。点数を取らせるためにテクニックにはしる授業が多くなってしまっては、本当の意味での英語のコミュニケーション能力を高めることにはつながらないです。

まとめ

8外部試験は実施回数、会場、費用、日本の大学入学以外には何に使えるか、スコア有効期限などそれぞれ違います。大学入試(英語)には引き続き注目していこうと思います。

参考

Brown, D.(2010). Language Assessment: Principles and Classrooms Practices

英検, AI による自動採点実証研究で有意な成果

Great Schools Partnership, The Glossary of Education Reform

The Mainichi, 8 private English tests accepted for future university admission system

文部科学省, 大学入学共通テストの枠組みで実施する民間の英語資格・検定試験について

Watanabe, Y. (1996). Does grammar translation come from the entrance

examination? Preliminary findings from classroom-based research, Language

Testing, vol. 13, no. 3

追記:

①外部試験導入に関しまして、勉強になる記事を見つけましたのでリンクを貼ります。こちらから。

②大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求める署名活動が行われました。

詳細はこちらから

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コメント

  1. プリン より:

    始めまして
    高校1年生の子供がいます。
    大学入試に外部試験導入には問題山積みだと思います。
    情報のある親や高校とない子では不公平ですし
    うちの子はB1とB2の間にいるので 何の試験受けたら確実にB2が取れるのか探してます。(子供の英語力上げるより合う試験探した方が早い)
    後、ここの所 ジーテックも英検も簡単になった気がします。この試験は簡単だよ?って噂になればそこの試験受ける高校生が増えるから儲かるわけで 試験全体のレベルが下がるのでは?とも思います。

    • carley より:

      プリンさま
      リアルなコメントありがとうございます!!高校生の親にしか書けないコメントで大変感謝いたします。簡単だと噂になれば儲かる…そうなりますよね。
      お子さまがB2が取れること祈っております。
      高校の先生方が集まるFBグループでもご意見聞きたいと思っていまして、プリン様に有益な情報が得られましたらシェアしますね。
      今後ともよろしくお願いいたします!

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